« 屈辱の日に | トップページ | 明治生れの 巧みな冗舌 »

亡き母の十三回忌

亡き母の十三回忌命日の前日
6月13日に 上野池之端の菩提寺に
詣でた私は 悪性の風邪で
一ヶ月以上寝込み 高熱 咳が酷く
辛いが 相変わらぬ車椅子運転手の
K君に支えられ 久方振りに
本堂での読経を聞き 墓前に詣でて
心が安らいだ

母は九十三才で亡くなったが
何とも唯我でワガママな人
江戸喋りの賑やかな人だった
特に八十代の頃は 通院先の
東京警察病院がフットライト舞台?だった
通院前夜に深夜起き出しては
部屋中に着物と帯を広げ
衣装選び?がお決まりだった
『病院通いの着物などナンデモいいでしょ
疲れるから早く寝たら!』と注意すると
母は
「(主治医の)院長センセ
毎度素敵なイタリァ製のネクタイ締めて
診察なさってる
バァさん患者としては せめて時節に
あった着物を着て行くのが礼儀デショ?」
と反論!

外科部長U先生と母との舌戦は
看護婦さん達の語り草だった
いささか厳ついお顔で
平素口数の少ないU先生は
母を可愛がって応対して下さり
母には冗舌でもあった

五十代からの糖尿病が素因で
八十代の母は 両足の痺れと
疼痛で歩行が不自由になった
手首と足首とで計測の血圧の差が
110以上にもなり 血流改善に
人工血管への取替え手術を勧められて
U先生から 私も同席して
母に手術内容の説明が始められた
「出来ればナイロン血管でなく
極上の絹の血管がよろしいけど~」等と
冗句連発だった母の顔色が
途中で険しく変わった 

U先生
「オマタの部分に人工血管を入れて~」


『お待ち下さい 不承知でございます』

U先生
「ン~」


『女の大事なトコロ
トンデモゴザイマセン』


「次元が違うでしょ」


『オダマリナサイ ニフニ マミエズです』
『アノヨデ ツレアイに
申し開きデキマセン』


「その次元じゃないでしょ」


『ジゲンジャナイ ゴキゲン悪いのョ
アタクシ』Etc

~ 駄目だこりゃだが 名医は
匙を投げない~

U先生
「分りました おばぁちゃん」
「手術は止める その代りに
運動して下さい じゃないと
足が腐ってしまいますからネ」
「毎朝お散歩をして下さいょ」とU先生
なだめるように大譲歩だがそれでも母は
『センセ アタクシ目的ナク歩くの
キライデゴザイマス』

「目的無じゃありません
病気を治す良い目的があるでしょ」

『センセのお宅の鎌倉と違って
ワタシドモノ下町は車で
アブノウゴザイマス』

「おばぁちゃんのお家
廊下がありますか」

『ゴザイマス』

「それじゃ 廊下を 行ったり 来たりで
20回やってください」

『アラ イヤデスヮ ちんミタイ』~

|

« 屈辱の日に | トップページ | 明治生れの 巧みな冗舌 »

「つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 屈辱の日に | トップページ | 明治生れの 巧みな冗舌 »